2017/11/13

セイタカアワダチソウの花蜜を吸いながら排泄するキタテハ秋型



2016年10月中旬

水辺の遊歩道沿いに咲いたセイタカアワダチソウの群落で秋型のキタテハPolygonia c-aureum)が訪花していました。
翅を開閉しながら吸蜜しています。
ニホンミツバチ♀と何度かニアミスしても、キタテハは逃げませんでした。
キタテハが吸蜜しながら急に腹端を持ち上げたと思ったら、透明な(やや白く濁った?)液体を一滴排泄しました。(@1:35)
キタテハのおしっこを見たのはこれが初めてです♪

セイタカアワダチソウとキタテハの組み合わせは季節の風物詩です。
普通種同士のありふれた組み合わせですけど、なんでも動画に撮ってみれば、ときどきこうして新しい発見があります。
▼関連記事 (4年前の動画) 
キタテハ秋型がセイタカアワダチソウに訪花吸蜜

満腹したキタテハはセイタカアワダチソウの花から飛び去ると、近くの茂みに移動しました。
ヨシの茎に巻き付いたツルマメの細い蔓に逆さまにぶら下がり、翅を開閉しています。
このとき日は照ってないので、日光浴ではありません。
翅を閉じて静止すれば枯葉に似ていて、保護色になりそうです。



2017/11/12

開花初日のハス蕾の開閉運動(壺状開花)【180倍速映像】

▼前回の記事
夜明けに咲くハスの開花運動【180倍速暗視映像】

前回は、ハス(蓮)の花が一番きれいに咲く開花3日目の様子を微速度撮影しましたが、あれは実は二回目の挑戦でした。
話の都合で紹介する順序が逆になりましたが、ハスの開花についてろくに予習せずに出かけたので、初回の挑戦はこんな映像↓になりました。



2017年7月下旬・午前5:33〜7:13(日の出時刻は4:35)


日の出とともに蓮池に出かけたら、時既に遅しでした。
開花の一部始終を記録するのなら、暗い夜明け前から撮り始めないといけないことが分かりました。
それでも一部の蕾が咲きかけ?のまま残っていたので、駄目元で三脚を立てて微速度撮影を開始。
広い蓮池でどの蕾を撮るべきか選ぶのに目移りしてしまい、何度か場所を変えました。
朝日の方角(東)に対して逆光にならないように考慮すべきですが、この日は曇り空なので関係ありませんでした。
野外で微速度撮影する際に大敵となるのは風による振動なのですけど、朝は穏やかでほぼ無風なので助かります。
早朝に咲いたばかりの蓮の花の独特の芳しい香りが辺りに漂い、クラクラします。

1時間40分間、10倍速の微速度撮影で記録しました。
その素材を更に加工した180倍速の早回し映像をご覧ください。
勉強不足の私はてっきり、開花不全の蕾を選んでしまったのか、たまたま開花のタイミングが他の蕾よりも出遅れてしまった個体を撮った失敗作の映像だと思ってしまいました。
しかし、ハスの開花について復習してみると、謎が解けました。
平均的なハスの花は4日間の寿命があり、毎日開閉を繰り返してから散るのだそうです。
また、開花を始めてからの日数によって開花の程度が異なります。
今回の映像の被写体は開花初日の蕾と考えられ、花弁がほとんど開かずにすぐに閉じてしまうので壺状開花と呼ばれています。

加藤文男『大賀ハス (縄文ハス)の花の開閉について』によると (福井市自然史博物館から公開されたPDFファイルへのリンク)、初日は開花開始時刻が遅いらしい。(p125より)



田中修『花が季節や時を告げるしくみ』によると、
花の開閉運動は、花弁の内側と外側の細胞の伸長差にもとづいている。(中略)そのため、花が開閉を繰り返すと花びらは大きくなる。だから、つぼみが初めて開いた花より、何日間かの開閉運動をつづけてきた花のほうがずっと大きくなっているのである。 (『花の自然史:美しさの進化学』第13章:p199より引用)

このように、本や文献を読んで復習してみると訳が分からなかった全ての現象が説明できて、感動しました。
粘り強い観察によってそれをゼロから完全に解明した先人の苦労が忍ばれます。
「咲かない蕾」をひたすら撮り続けていた私は、朝の蓮池ですっかり変人扱いされてしまいました。
しかし早回し映像にしてみれば、蕾の開閉運動は一目瞭然です。
開花初日のハスは花弁が全開せず、少し咲きかけただけですぐに蕾が固く閉じてしまうのです。(壺状開花)
開きかけの蕾にもときどきハナバチ類が偵察に来ていました。

▼関連記事:開花初日のハスの花を偵察するクロマルハナバチ♀とセイヨウミツバチ♀
開花すると一番外側の花弁がハラリと下の葉に落ちる様子も、他の花で目撃しました。




↑【おまけの映像】
オリジナルの10倍速および60倍速に加工した映像をブログ限定で公開します。
ゆっくり見たい人はこちらのバージョンをどうぞ。

2日目、4日目の開花運動および閉花運動も撮影したいところですが、来季以降の宿題です。
本当に同一の蕾に注目して4日間、ひたすら開花と閉花を観察できれば、花の生涯の記録としては理想的です。


5:31 am
5:32 am(動画の撮影アングル)

オオヒラタシデムシに便乗するダニ



2016年10月中旬

郊外の工場地帯でオオヒラタシデムシNecrophila japonica)を発見。
歩道をなぜか後退していました。
よくみると、胸背と鞘翅に赤いダニ(種名不詳)が何匹も寄生しています。

採寸代わりに直径2cmの一円玉を並べて置いてみました。
オオヒラタシデムシは立ち止まったまま後脚で腹部を掻いています。
昆虫にもダニに集られて「痒い」という感覚があるのでしょうか?

直接触れないように硬貨を使ってシデムシを仰向けに裏返してみました。
すると胸部の裏面にも大量のダニが付着していました。
シデムシの性別の見分け方を知らないのですけど、腹端が細長いのは♂の交尾器なのかそれとも♀の産卵管なのかな?
必死で暴れるものの、舗装路では足先が上手くひっかからず起き上がれないようです。
いつまで経っても自力では起き上がれないので、最後は手助けしてやりました。
道端の草むら(落ち葉)へ早足で逃げて行きました。

見事な精密画でヨツボシモンシデムシの生態を丹念に描いた本、舘野鴻『しでむし』を読むと、寄生ダニのことが書いてありました。
オオヒラタシデムシにつくダニはまた違う種類なのかもしれませんが、似たような生態なのでしょうか。

シデムシの成虫や幼虫の体には、必ずといっていいほどオレンジ色のダニがくっついています。このダニは、シデムシの体液を吸っているわけではなく、シデムシをタクシーのような移動手段として利用しているのです。ダニの狙いは死体。かれらもここで繁殖します。とても足が速く、シデムシが死体にたどりつくと、さっさと下車します。
生まれたダニの子どもたちは成虫だけでなく、巣をはなれる終齢幼虫にものっかっていきます。そのままさなぎのへやへも同行、新しく羽化したシデムシの成虫は、幼なじみのダニとまた旅をはじめます。 (p35より引用)


私も冒頭でこれを「寄生」ダニと書いてしまったのですが、それは間違いで片利共生の一例の「便乗」かもしれません。

片利共生
[英commensalism 仏commensalisme 独Kommensalismus, Karpose 露комменсализм]
種間相互関係の一形態で,それによって共生者の片方の適応度は増すが,他方の適応度は変わらない状態.ふつう前者をcommensal,guest,あるいはsymbiont,後者をhostとよぶ.(中略)相手の体に付着して移動のための利益を得ているような関係を運搬共生(phoresy)とよぶこともある. (『岩波生物学辞典 第4版』より引用)


後で思うと、折角の機会なのでマクロレンズでダニをしっかり接写すれば良かったですね。


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