2017/11/11

巣立ち後のハシボソガラス親鳥の行動(野鳥)



高圧線の鉄塔#21でのハシボソガラス営巣記録#36


2017年6月中旬・午後15:12〜15:22

全4羽の雛が巣立っても、ハシボソガラスCorvus corone)親鳥♀♂の子育て(育雛)は終わりではありません。
しばらくは縄張り内で幼鳥を引率し、自力で採食できるようになるまでは幼鳥に巣外給餌する必要があるのです。
幼鳥はどこに隠れているのでしょうか?

私が未練がましく鉄塔の空巣を撮っていると、いつもの親鳥が高圧線に止まりました。
私の様子を見に来たようです。
ときどき嘴を足元の電線(鉄塔の一番上から伸びる高圧線)に擦り付けています。
やがて高圧線から北へ滑空して採餌に出かけました。
(採餌に出かけるのは今までと同じです。)

しばらくすると、今度は営巣地の近くの住宅地の電柱で親鳥が休んでいました。
電柱の天辺から上に伸びるアルミ角柱(避雷針?)の天辺に止まっています。
ここも親鳥のお気に入りの止まり木の一つで、育雛中は雛の糞を捨てに来ていた(排糞)地点でもあります。
しかし、いつまでたっても飛び立ちません。
この日は結局、私が見ている限り、親鳥は一度も鉄塔の空巣を訪れませんでした。
空巣に用は無いのでしょう。
親鳥がどこで幼鳥に巣外給餌しているのか突き止めたかったのですが、親鳥も幼鳥の居場所を私に知られたくないような印象を受けました。

領空侵犯した別のカラスを追い払うために親鳥が飛び立ったシーンを目撃しています。
相手が慌てて逃げたので争いにはならず、親鳥も途中で引き返しました。
雛が全て巣立った後でも縄張り防衛の意識は強いようです。
動画を撮り損ねたのが残念でした。

鉄塔の南にある小さな林(スギと雑木林の混合林)に親鳥がときどき行くので怪しいと思い、私も後でこっそり行ってみました。
しかし残念ながら林内や周辺の農地でカラスの家族群を見つけられませんでした。
幼鳥がどのくらい飛べるのか知りませんが、もっと安全な遠くへ飛んで行ったのかもしれません。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


当地ではハシボソガラスの繁殖は年1回だけのようで、この巣#21もその後に2回目の繁殖に再利用されることはありませんでした。




余談ですが、実はこの最終日、定点観察の撮影地点に行く途中で事件がありました。
私が足早に歩いて営巣地へ向かっていると、向こうから飛んできたハシボソガラスが空中で脱糞しました。
頭上に落ちてきた糞を避けようと咄嗟に半身になってかわしたものの間に合わず、白いポロシャツの左肩に被弾!(命中)
明らかに私の顔や頭部を狙って強烈な嫌がらせをしてきたのです。
カラスは横の鎮守の森(杉林)に止まって、私をからかうように掠れ声で少し鳴きました。

定点観察している巣#21の親鳥なのか知りたいところですが、個体識別できていないので分かりません。
鎮守の森を縄張り(営巣地?)とする別のハシボソガラスなのか?と最初は思いました。
帰宅後に地図を広げて調べると、爆撃地点から巣#21までの直線距離は412mでした。
カラスの縄張りが半径500mと言われているので、巣#21の親鳥だとしても不思議ではないことが分かりました。

後藤三千代『カラスと人の巣づくり協定』によると、

大阪高槻市の野外条件では、ハシボソガラスの巣間距離は、樹木営巣の場合は140~680メートル(n=172)、人工物営巣の場合は140~780メートル(n=52)で、樹木と人工物に大きな違いはみられない。このデータを基準にして、本書では、電柱営巣の巣間距離が140メートル以内は同一つがい、781メートル以上は他のつがいの巣とし、141~780メートルは、営巣日の重なりや営巣時期の間隔などを考慮して、同一のうがいによる再営巣であるかどうかを個別に判断した。 (p31より引用)


連日のようにしつこく巣を見に通ってくる私の存在が親鳥は気に入らなくて憤慨し、遂に待ち伏せして鬱憤を晴らしたのかもしれません。
私も撮影地点へ通うルートをときどき変えたり遠回りしたりしていたのですけど、親鳥には私の行動パターンを読まれていたのでしょうか。
この時点で既に最後の雛も巣立っていたはずなので、親鳥が縄張りの辺境にも出てくる余裕ができたのかな?

白いポロシャツに付着した黄土色の液状便の匂いを嗅いでも無臭だったのは助かりました。
数日経った後でも、汚れに粉洗剤をまぶしてから洗濯したらきれいに落ちました。

別の記事にするか迷ったのですが、糞空爆のスクープ映像も撮れなかったので、一緒にまとめて書きました。

シリーズ完。


つづく→番外編:ハシボソガラスによるメヒシバの種子散布?

名誉の勲章?

ハスの花から飛び去るトラマルハナバチ♀



2017年7月下旬・午前5:51

早朝の蓮池に咲いたばかりのハス(蓮)トラマルハナバチBombus diversus diversus)のワーカー♀が訪花していました。
蓮池では他種のマルハナバチ(クロマルハナバチおよびオオマルハナバチ)と比べて本種は個体数が少ないのか、この短い動画を一度しか撮れませんでした。
大輪の花から出てきて飛び去る様子を1/4倍速のスローモーションでリプレイ。
後脚の花粉籠は空荷のようでした。

余談ですが、ハスを訪花中のマルハナバチが誤って水面に落ちるのを目撃しました。
落水しても自力でハスの葉に這い上がり、無事に飛び去りました。
スクープ映像を撮れなかったのが残念です。

朝日が昇ってしばらくすると、蓮池にハナバチ類がぱったり来なくなりました。
ハスの受粉と採餌は開花直後の短期決戦型なのかもしれません。
花の芳香も減った気がしますが、私の鼻が慣れてしまっただけかもしれません。
蓮池で見かける数が少なかったトラマルハナバチやクマバチは、激烈な採餌競争で優占種セイヨウミツバチ、クロマルハナバチ、オオマルハナバチに対して負けてしまったのかな?と想像を逞しくしました。

岸から手が届くハスの花の雄しべに触れてみると、ハナバチに採餌され尽くされて葯の花粉は残っていませんでした。
もう一つの花で試すと、花糸の根元に黄色い花粉が残っていました。
指が黄色く汚れたので、ようやくハスの花粉の色が分かりました。


2017/11/10

最後の雛も巣立った後のハシボソガラス空巣とその真下の糞(野鳥)



高圧線の鉄塔#21でのハシボソガラス営巣記録#35


2017年6月中旬・午後14:27〜15:57

いつもより少し早い時間に来てみたのに、ハシボソガラスCorvus corone)の巣から全ての雛が巣立っていて空き巣になっていたので、唖然としました。
前日に1羽だけ残っていた雛も、巣立つ素振りは見せていなかったので、予想外でした。
カラスの雛が巣立つ瞬間を映像で記録するという私の夢は破れてしまい、残念無念。
早起きして朝から見張るべきでしたが、巣立ちの予兆が私には分からなかったのです。
もし産卵日または孵化日が分かっていれば、巣立ちまでの日数の目安は先人の研究から見当をつけることができます。
しかし高所の巣の中を覗く術がないので、巣立ちの日を予想できませんでした。(ドローンを飛ばすことは許されるのだろうか?)
連日通う定点観察はかなりしんどくて、終盤は私も内心では飽きていたので、ようやく終わってホッとしました。
巣立ちを確実に撮るには、無人カメラで巣の監視映像を愚直に休みなく録画し続けるしかなさそうです。

念の為に微速度撮影で40分間ほど巣を監視してみても、雛の姿や親鳥による給餌シーンは見られませんでした。
10倍速の早回し映像をご覧ください。(@1:37-)
巣内に動きは全くありませんでした。
もし雛が巣にうずくまっているせいで外から見えないにしても、40分間もじっとしていることはあり得ません。
親鳥も空き巣には一度も飛来しませんでした。


さらに駄目押しとして、鉄塔の周囲を一回りしながら色んなアングルから空き巣を撮影してみました。
枯れ枝を緻密に組み合わせて作られた巣が、雛が育つにつれてどんどん風化・崩壊して貧相な巣になることも、実際に長期観察するまでは知らなかったことです。

梅雨入り前に4羽の雛全てが巣立ったことになります。
今季に同時並行でカラスの巣を幾つか観察した中で、この巣(高圧線鉄塔#21)が巣立ちまで一番遅かったです。
営巣地周囲の環境は素人目にはかなり自然豊かで育雛のための餌資源はここが一番豊富そうに見えたので、意外な結果でした。(田畑、林、池、住宅地の家庭菜園やゴミ捨て場などバラエティに富んだ環境なのに…。)
もしかすると私が見ていない営巣初期に何かトラブルがあって産卵をやり直したのか、それとも繁殖経験の浅いつがいだったのかもしれません。

以前から気になっていたのですが、長い針金を何本も束ねて扇状(円錐状?)に広げた物が高圧線鉄塔の鉄骨のあちこちに取り付けてあります。
この謎の物体(正式名称は?)はおそらくカラスが鉄塔に止まれないように電力会社が設置している障害物だと思います。

しかしカラスの営巣や育雛を妨げる効果は薄い(全く無い)ことが証明されました。 (※追記参照)

最後に、高圧線鉄塔#21の直下に行ってみました。

今までは親鳥を刺激しないように、巣の真下をウロウロしないように自重していたのです。
立入りを禁じる金網の隙間から覗いてみると、巣の真下の敷地に雛が排泄した糞が大量に散乱していました。

親鳥が給餌する度に甲斐甲斐しく雛の糞を回収して外に捨てに行っても(排糞行動)、どうしても全ては回収し切れず巣の下を糞で汚してしまうようです。(糞害)
雛が巣立ちに失敗して滑落死した可能性もわずかに疑っていたのですが、雛の死骸は落ちていなくて一安心。
後日に再訪すると、巣の下の糞は雨で洗い流されてきれいになっていました。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

つづく→#36:巣立ち後のハシボソガラス親鳥の行動(野鳥)




※【追記】
矢崎葉子『カラスバトル』を読むと、高圧線鉄塔に営巣するカラスに悩まされている東京電力に詳しく取材した見事な解説があり、とても参考になりました。
それとともに私の誤解も解けました。
電線には二種類あって、一般家庭に電気を送る配電線と、変電所間を結ぶ送電線がある。配電線はビニールで絶縁してある、いわば家庭にある電気コードの親玉みたいなもので、接触しても感電しない。一方、送電線は裸線、つまり電気コードの中味がそのまま剥き出しになっている状態だ。で、カラスの事故は大部分が送電線で起こる。(中略)たとえ裸線でも、一本の送電線に止まっているぶんにはカラスは感電しない。(中略)電位差がなければ流れないわけで、それが一本の送電線に止まったカラスが感電しない理由だ。この理屈は電線とそれを支える鉄塔の間についてもいえる。電線を鉄塔にそのままつなげてしまうと、鉄塔を通って電気はどんどん地面に放出されて、私たちの家庭には電気が来なくなってしまう。そのため鉄塔と電線を碍子と呼ばれる絶縁体で固定し、その間は、鉄塔に触れないように迂回させた電線を通しているのだ。ここでやっとカラスの登場となる。そうやって苦労して鉄塔と電線を絶縁しているのに、そこに巣材の小枝やハンガーなどが落ちたり、またカラスの羽根や体が挟まったりすると、絶縁が保てなくなり、電気が流れてショートしてしまうのだ。 (中略)巣材が針金、ハンガーではなく、たとえ木であっても、木が湿っている場合などは電気を通してしまうので、事故が起きることがあります。 p98-99より引用)

営巣場所はいろいろあるが、鉄塔と電線の間の絶縁部分付近などに巣を作られると事故が発生する危険性は高い。しかも、ちょうどその箇所は木の枝のように横につきだし、まるで枝分かれしているような構造になっており、カラスが営巣しやすい要素が揃っているのだ。送電線に巣が作られた場合、事故になりそうな箇所にある巣は撤去する。事故の可能性が低いと判断した場合はそのまま巣を残して、ヒナが巣立つのを待って取り除く。 (p103より引用)


(カラス対策として)あの手この手を使っているわけだが、これまでの経験上、視覚や聴覚に訴えるものより、物理的にカラスに来てほしくないところを防護するもののほうが費用対効果が高いそうだ。つまり、テグスを張ったり、カラスが止まれないように針山のようなものを設置したり、また、ゼリー状のネバネバしたものを貼付する、あるいは、ネットで局所を覆ってカラスの浸入を防ぐ。
ただ、物理的な対策にも欠点はある。メンテナンスを行なう際に逆にその防護が作業の支障になることがあるからだ。 (中略)最近主流になっているのが、営巣誘導カゴですね。つまり、一方で事故になりやすい部分に巣を作りにくくする対策をとっておいて、もう一方で営巣用のカゴを鉄塔の安全な場所に設置して、こっち側にお作りくださいとカラスの巣作りを誘導するわけです。(p105-106より引用)


つまり、私が観察したカラスの巣も、鉄塔中央のステージのような部分に作る分には電力会社からも黙認されているようです。(これが営巣誘導カゴ?)
一方、送電線を支える横の支柱の端にある碍子付近には絶対カラスに近づいて欲しくないので、物理的な障壁を色々と設置しているのだと理解できました。

私もカラス関連本をこれまで何冊も読んできましたが、『カラスバトル』は取り上げたトピックのバランスも取れていて名著だと思います。
筆者の取材力に感服しました。


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