2015/10/09

ムネアカオオアリとクロヤマアリの死闘:ヒメギス死骸の占有行動



2015年7月下旬

峠道の路上でムネアカオオアリ♀(Camponotus obscuripes)とクロヤマアリ♀(Formica japonica)のワーカー同士が死闘を繰り広げていました。
ムネアカオオアリは腹部を前に曲げて敵に蟻酸を噴射しつつ噛み殺そうとしています。
圧倒的な体格差があるのに、敵はなかなかしぶとく決着がつきません。
ムネアカオオアリが何度噛んでも、クロヤマアリの息の根を止められないでいます。
体格で劣るクロヤマアリは相手の脚に噛み付き、虫の息(瀕死)の状態でも振り落とされないよう頑張っています。

喧嘩の原因はすぐに分かりました。
車に轢かれたヒメギス♀(Eobiana engelhardti subtropica)がすぐ近くに転がっていて、その死骸に多数のクロヤマアリが群がっていました。
クロヤマアリが占有する獲物を横取りしようと単独のムネアカオオアリが不用意に近づいた結果、特攻隊に撃退されたのでしょう。
ミツバチ科やスズメバチ科など他の社会性ハチでは危機の際に警報フェロモンを発して仲間の援軍を呼ぶでしょう。
ところが今回のアリの場合は、蟻酸を戦いに使ってもクロヤマアリの群れは助太刀に駆けつけないという冷徹(冷酷)さが興味深く思いました。

しばらくすると、ムネアカオオアリは殺したクロヤマアリをようやく振りほどいたようです。
しかしもう懲りて、ヒメギスの死骸には近づかず立ち去りました。

普通種のクロヤマアリは小さくても相当手強いファイターであることを実感しました。
日本最大のアリであるムネアカオオアリに対して1対1の激闘を繰り広げ、最小限の犠牲で獲物を死守する様は深い感銘を受けました。



キジバト(野鳥)の交尾と三角関係



2015年8月上旬

郊外の住宅地の電線で3羽のキジバトStreptopelia orientalis)が交尾していました。
カメラの起動トラブルで貴重な時間をロスしましたが、望遠レンズを向ける度に何度か逃げて場所を変えました。

3羽の行動を見ていると、どうやら♂2♀1の組み合わせのようです。
♀が逃げ回る度に♂が追いかけ、何度も場所を変えて交尾を試みています。
♂同士がまず戦って決着を付けてから♀と交尾するのかと思いきや、ライバル♂を追い払ったりしないのが不思議です。
あるいは既に♂の順位が決まっていて、劣位の♂が未練がましくつきまとっているのでしょうか?
それともキジバトは乱婚制で、2羽の♂が代わる代わる♀と交尾しているのかな?
少し遠いためか、鳴き声は聞こえませんでした。

次回は求愛行動の詳細をじっくり観察してみたいものです。

『しぜんのせかい11:きじばと』によると、

・キジバトの求愛は、♀のそばで♂がクークー鳴くクーイングの後、♂の嘴の中に♀が嘴を入れるビリングを行います。キジバトの繁殖期は4月から6月までが普通ですが、10月ぐらいまで巣作りするものもいます。(p14-15)
・姿や大きさでキジバトの♂と♀を見分けることはできません。若鳥は目が褐色なので成鳥と区別がつきます。(p6)

wikipedia情報によれば、キジバトの体色は雌雄同色で、繁殖期はほぼ周年らしい。


【追記】
『スズメの少子化、カラスのいじめ:身近な鳥の不思議な世界』p142によると、キジバトの襟の部分にある縞模様があれば成鳥で、無ければ幼鳥。
英語の慣用句でa pair of turtledoves は仲睦まじいカップルの意味らしく、実際にキジバトは年中2羽でいることが多い。



【追記2】
高木清和『フィールドのための野鳥図鑑:野山の鳥』でキジバトを参照すると、

求愛行動は、パタパタと舞い上がり、翼を広げて滑空飛翔をする。♂は♀の側で頭を上下に振ってクゥクゥ、プンと鳴いたりする。(p34より引用)



【追記3】
保育社『原色日本野鳥生態図鑑<陸鳥編>』でキジバトの項を参照すると、
♂の♀に対する求愛行動は、♂が何回も飛翔ディスプレイをした後で、♀が止まっている枝の上や♀の近くに止まり、枝上でウグッ、ウグッと鳴きつつ行なわれる。喉を膨らませて、おじぎのような動きをしながら、♀のほうへ歩いたり♀の前で回ったりする。(p91より引用)
どうやら私は、交尾に先立つ求愛の飛翔ディスプレイを見逃してしまったようです。




【追記4】
『山渓ハンディ図鑑:新版 日本の野鳥』でキジバトを参照すると、
・♂は♀におじぎをするように動作しながら「クークックークッ」と鳴いて求愛する。その他、「プン」と小さな声を出す。・虹彩は橙色。目のまわりは裸出して赤い部分があり、繁殖のときには、この赤い部分が大きくなる。 (p104より引用)



2015/10/08

ニンニク上で繭を紡ぐノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫



2015年7月下旬・室温31℃、湿度61%

ノシメマダラメイガの飼育記録#27

▼前回の記事
飼育容器から脱出を試みるノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫

厨房で採集したノシメマダラメイガPlodia interpunctella)とニンニクを密閉容器に入れて飼育してみたら、幼虫の体がぴったり収まる球根表面の溝のような窪みで繭を紡ぎ始めました。
背景(ニンニクの皮)が白っぽいので絹糸が見えにくいです。
後半からは(@3:35〜
)10倍速の微速度撮影を始めたものの、天井部に絹糸を固定する物が無いので、いつまで経っても繭の上部が安定しません。
この場所は諦めたのか、作りかけの繭の端から出て行ってしまいました。
撮影用の強い照明に慣れていないせいかもしれません。
この飼育容器内はあまりにも清潔で無味乾燥な空間のため、巣材に使えるゴミが周囲に乏しいことも問題のようです。



▼関連記事 
ゴミを綴り繭を紡ぐノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫【微速度撮影】

つづく→#28:産卵行動





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