2015/10/05

ノコギリカミキリ♀の鳴き声



2015年7月下旬

林縁の路上でノコギリカミキリ♀(Prionus insularis insularis)がせかせかと歩いていました。
触角が短く鋸歯が弱いので♀ですね。
前胸に照りがあるのでニセノコギリカミキリは除外されます。
wikipediaによれば、ノコギリカミキリは「歩行速度が他の大型のカミキリムシと比較して早い」らしい。

車道を横断し道端の草むらに逃げ込んだところで、捕獲しました。
キーキー♪鳴いて威嚇する様子を撮るつもりだったのに、あまり鳴きませんでした。
帰ってから調べると本種の発音の仕方は独特らしく、私が鞘翅を両横から掴んだせいで上手く発音できなかったようです。(どうやって持てば良かったのかな?)


カミキリムシ類といえば、前胸と中胸をこすり合わせてキイキイ音を出すものと思いがちであるが、中にはまったく音を出さないものや、他の方法で音を出す種類も少なくない。
ノコギリカミキリは後脚の腿節を翅鞘の縁にこすりつけてシュッシュッと音を出す。
甲虫の発音がおのれを捕まえた相手に対するおどしであることは確かであるが、本種などは古い枯れ木に棲む夜行性の種類なので、闇の中での仲間同士の通信手段にもなっているのかもしれない。

(『山渓フィールドブックス13:甲虫』p100より)



他の多くのカミキリムシと違い、これらの種の特徴として、発音する際は全胸部と頭部を前後させて発音するのではなく、前翅の縁と後脚や、後翅と腹部をこすり合わせ、「シュッシュッ!」と音を立てるが、これはカブトムシのオスがメスに求愛する時の発音手段に似ており、腹部を押さえると発音できなくなる。(wikipediaより)

開閉している大顎に草の葉を近づけると噛み切りました。(映像なし)
撮影後は車に轢かれないよう雑木の灌木林に向かって放り投げたら空中で羽ばき始め、飛んで行きました。
動画に撮ればよかったですね。
未採集、未採寸。

鳴き声を声紋解析してみる?



2015/10/04

垂直円網に横糸を張るオニグモ幼体(蜘蛛)【6倍速映像】



2015年7月上旬・深夜23:28〜23:57

山麓のキャンプ場で夜中にログハウスの入り口の枠を利用して造網しているクモが居ました(戸口の幅は80cm)。
ちょうど垂直円網に粘着性の横糸を張っているところでした。
微速度撮影しようと慌てて三脚を立てている間にうっかり網を引っ掛けてしまい、円網の下部を壊してしまいました。
当然クモは驚いて逃げ、上の枠糸に避難しました。
しばらくすると、破れた箇所はそのまま構わずに続きの造網を再開してくれました。
約30分間(午後23:28〜23:57)長撮りした映像を6倍速に早回しした映像でご覧下さい。
室内の蛍光灯による照明が逆光になっていますが、そのおかげで糸が見えやすくなりました。
腹面をこちらに向けているクモは、反時計回りで円網の外側から中央に向かって螺旋状の横糸を張り進めます。

造網中に偶然、小さな羽虫が作りかけの円網上部にかかりました。(@0:50)
クモは造網作業を中断して直ちに駆けつけましたが、結局この獲物は捕食しなかったようです。
元の場所から横糸張りを再開するかと思いきや、獲物の近くからそれまでと逆回り(時計回り)に横糸を張り始めました。(@1:06)
中断したせいで造網のペースが乱れたようです。
しばらくすると自分の過ちに気づいたのか、途中で折り返して反時計回りに戻りました。

その後、通行人の振動に警戒したクモは造網作業を中断して網の上部に逃げました。(@2:23)
ほとぼりが冷めると戻って来て、元の位置から横糸張りを再開。

横糸を張り終えると、放射状の縦糸が集中した中央のこしきで糸を噛み破り丸い穴を開けました。
垂直円網の完成後は甑で下向きに占座。
甑の高さは地上から200cm、円網の直径45cmでした。

完成したばかりの網の右下にかかった獲物を捕らえると甑に戻り捕食しました。
獲物はおそらく蚊だと思います。
(映像はここまで。)

その後もしばらく観察していると、飛来した小蛾が網にかかりそうになったときにクモはなぜか網を揺すって獲物を弾き飛ばしました。
動画に撮れず残念。
獲物として蛾は嫌いなのでしょうか?
蚊などが目当てなのかな?
網の破損を防ぐための行動かもしれません。
ここはログハウスの照明に誘引されて夜行性の昆虫が多数飛び回るため、クモにとって絶好の営巣地になっています。


背面
背面
腹面

コガネグモ科でオニグモの一種だと思うものの、同定のため撮影後に採集しました。
この夜はストロボのディフューザーを持参しなかったため、現場での写真撮影は白飛びしてしまったのです。


以下はエタノール液浸標本の写真。

オニグモ♀成体にしては小さ目です。
腹面を見ると♀だと思うのですが、外雌器の上に垂体がありません。
また、外雌器の左側の開口部を塞ぐように何か複雑な形状の黒い物が付着しています。(刺さっている?)
これは交接の際に♂が残した交接プラグなのでしょうか?

交接の最中に♂の触肢の先がちぎれて貞操帯として残ったのではないかと想像しました。


交接プラグ?

『クモの生物学』p215を紐解いて交接プラグについて調べてみました。
クモ類のなかには♀の再交接を防止するために、♂が♀の生殖器内に交接プラグをつけるものがいる。クモ類の交接プラグには2種類あって、1つは♂の触肢の腺から分泌される液状の物質で、移精終了後、♀の外雌器をこの液状物質でふさぐ。この物質は分泌後に固まり、♀が死ぬまで付着している。(中略)交接プラグのもう1つのタイプは、♂の触肢の構造の一部がはずれて、♀の外雌器の交接管の中に残るもので、コガネグモ科やヒメグモ科などでみられる。


いつもお世話になっている「クモ蟲画像掲示板」にて問い合わせたところ、きどばんさんより以下のコメントを頂きました。
外見や生息状況からはオニグモしか思いつきません。外雌器が形成されているようには見えないのでまだ幼体なのではないかと・・・いまいち自信が持てませんが。黒い物体が何なのかは全くわかりません。
という訳で、オニグモAraneus ventricosus)幼体と訂正しておきます。
「この謎の物体はきっと交接プラグだ!」→「ならば♀成体か」→「交接プラグが刺さっているところが外雌器なのだろう」→「こんな外雌器をもつオニグモの仲間っているの?」…という具合に、興奮の余り思い込みに引っ張られて勝手にややこしく考えてしまいました。
幼体ということは、♀かどうかも分からない(ひょっとすると♂かもしれない)のですよね。

すぐ横の軒下に別個体のオニグモ♀成体が巨大な網を店開きしていて、同種でも網を張る場所によって発育具合に相当の差が出ることを目の当たりにしました。

気になる謎の黒い物体は形が複雑なのでてっきり♂触肢かと思ったのですけど、あるいは腫瘍とか体外寄生生物かもしれませんね。

すると後日、yspiderさんより貴重な情報提供を頂きました。
かつてAtypusで、イオウイロハシリにおける症例報告がありましたが、私は飼育下においてアオグロハシリで確認しています。「脱皮中に書肺気門から赤黒くよく粘る液体が流出し、そのまま黒化、硬化。この症状が出たクモは数時間から数日で死亡する」というものです。私は、脱皮時に体勢が不適切だったために圧がかかり、書肺および体液が漏れてしまった(脱腸ならぬ脱書肺)のではないかと予想しているのですが、詳しいことは何もわかりません。



↑【おまけの動画】
早回し処理をしないオリジナルの動画でリアルタイムの横糸張りをご覧下さい。
30分弱と長いため、ブログ限定で公開します。


@5:15 飛来したコガネムシの一種が作りかけの円網の上部にかかる。
@6:43 警戒していたが造網を再開。大物過ぎて手に負えないと判断した? 捕帯でラッピングしなかったのは造網中に絹糸を消耗したくなかった?(使う糸腺しせんが違うはず)
異物として網から外して捨てず放置したのは、網の完成後に捕食するつもりだった?
@10:51 擬死していたコガネムシが突然激しく羽ばたいて自力で網から脱出した。クモは無関心に造網作業を続行。
@12:15 小さな羽虫が飛来し、作りかけの円網の右上部分にかかった。クモは無視して造網を続ける。
@14:18〜14:50 通行人の振動に驚いて、網の左上の扉枠に一時避難。
@20:44 小さな羽虫が飛来して網に近づくと、クモは網を激しく揺すって追い払った。
@24:30 小さな羽虫が飛来して網に近づくと、クモは網を激しく揺すって追い払った。
@28:40 網の完成後に捕食に向かったのは、新しくかかった獲物(小さな羽虫)だった。

ヒメジョオンの花蜜を吸うキタテハ



2015年7月下旬

道端に咲いたヒメジョオンの群落でキタテハPolygonia c-aureum)が訪花していました。
翅を開閉しながら吸蜜に余念がありません。



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