ヒオドシチョウの飼育記録#14
▼前回の記事
羽化直後に蛹便を排泄するヒオドシチョウ
2015年6月上旬・室温25℃・湿度45%
午前中に羽化したヒオドシチョウ(Nymphalis xanthomelas japonica)個体c無印は昼頃になるといつの間にか止まり木から離れ、レースカーテンに止まっていました。
ようやく翅や体が充分に固まったのでしょう。
走光性があり、明るい窓際へ向かって飛んで行きました。
記念すべき初飛行の瞬間を(無理に飛び立たせるのではなく)自然な状態で動画に記録するのはなかなか難しそうです。
翅を開閉しながらカーテンをよじ登ります。
逆光では翅表の美しい紋様がよく見えないため、ビデオカメラ内蔵の白色LEDを点灯しました。
ところが眩しい光を近づけられた蝶は、興奮したように暴れてしまいます。
この辺りが動画撮影の難しさで、美しい写真を撮るだけなら逆光でもフラッシュを焚けば簡単です。
しかし動画となると、補助照明のせいで不自然な行動になってしまうのでは本末転倒になってしまいます。
レフ板は使ったことがないのですけど、蝶を怖がらせてしまうのは一緒でしょう。
手に乗ってもらおうと蝶の目の前に指を差し出したのですが、落ち着かなく羽ばたくばかりで上手くいきませんでした。
最後は窓を開けて放蝶しました。
(近所で採集してきた幼虫を育てた場合は放蝶しても問題ないというのが私の個人的見解です。)
つづく→#15:ヒオドシチョウの羽化(左右の口吻が結合する様子)
ヒオドシチョウの飼育記録#13
▼前回の記事
ヒオドシチョウの羽化【10倍速映像c】
2015年6月上旬・室温25℃・湿度50%
ヒオドシチョウ(Nymphalis xanthomelas japonica)個体c無印が翅の伸展を完了しました。
次は余分な体液を蛹便(羽化液)として排泄する瞬間を動画に記録するのが今回の目標です。
微速度撮影ではなく、通常(リアルタイム)のHD動画に切り替えました。
午前10:02:00、初めて排便しました。
その瞬間に閉じていた翅を少しだけ開いたのは、おそらく蛹便で翅を汚さないためでしょう。
5分後の10:07:15に再び排便しました。
今回は翅をわずかに開いた状態で静止していたので、排泄の瞬間に翅を動かす必要がなかったようです。
血の色をした雫が水差しのペットボトルを伝い垂れ落ちる様子が撮れていました。
下に敷いた白紙も赤く汚れています。
動画による監視を止めた直後に、今度は透明な液体を排泄しました。
蛹便の色は種類によって異なります。
鱗翅目を幾つか飼育下で羽化させてきた中で、今までこんなに赤い蛹便を他の種類では見たことがありません。
緑色の柳の葉だけを食べて育ったのにこんな赤色を合成するなんて、まるで魔法のようです。
翅の鱗粉に使われた赤い色素の残りなのでしょうか?
(仮説:赤い翅のチョウの蛹便は赤いのかな?)
ちなみに、昆虫の血液はヘモグロビンを含まないため赤くありません。
これまで私が飼育下で羽化を観察した数種類の鱗翅目の中で、ヒオドシチョウの羽化は翅伸展の速度も蛹便を排泄するまでの時間もおそろしく早かったのが印象的でした。
つづく→#14:羽化後の初飛行