2014/09/13

ヒレハリソウの花で盗蜜するクマバチ♀



2014年7月中旬

山村の用水路沿いに生えたヒレハリソウ(=コンフリー)の群落でキムネクマバチ♀(Xylocopa appendiculata circumvolans)がせっせと吸蜜していました。
訪花シーンをよく見ると、漏斗状の花筒の外に止まる度に根元を食い破って穿孔盗蜜しています。
受粉に寄与しないので当然ながら後脚の花粉籠は空荷です。
蜂が飛び去った後も花をよく見ると盗蜜痕の穴が見えます。

途中でクマバチ♀がトラマルハナバチのワーカー♀とニアミスしました。
舌の長いトラマルハナバチは正当訪花しているのに、こちらも花粉籠は空荷でした。



マイマイガ(蛾)前蛹cから脱出するヤドリバエの終齢幼虫【微速度撮影】



2014年7月上旬


▼前回の記事
体内寄生で歩行障害を呈したマイマイガ(蛾)前蛹c

繭を紡いで以来ずっと様子のおかしいマイマイガLymantria dispar japonica)の前蛹cは歩き疲れたのか、ようやく落ち着きました。
10秒間隔のインターバル撮影で監視記録してみます。
私が寝ている間に前蛹が脱皮・蛹化する瞬間を監視記録するつもりでした。
徘徊運動で繊細な繭を壊されないように、作品を取り除いてあります。
(繭コレクションに加わりました♪)
繭の外を散々徘徊した挙句に疲れて横たわる前蛹がときどき蠕動運動しています。

ところが、明け方に腹部右側面より白いウジ虫が1匹脱出しました。(@4:12 AM)
やはり予想していた通り、この異常行動をするマイマイガcはヤドリバエの仲間に体内寄生されていたのです。
ブランコケムシ(マイマイガの幼虫)に寄生するハエとしてはブランコヤドリバエが有名です。
ただし他にも種類が多いので、ハエの成虫が羽化しないとブランコヤドリバエかどうかもちろん確定できません。

【参考文献】 
南智子, 石井実, and 天満和久. "大阪の里山と都市緑地におけるマイマイガの寄生性天敵相." 日本応用動物昆虫学会誌 43.4 (1999): 169-174.全文PDF
寄主から脱出したウジ虫は容器内を盛んに徘徊しますが、壁面を登れないので脱走する恐れはありません。
ランダムウォークするウジ虫に遭遇する度に毛虫は嫌がって逃げ回ります。

寄主に傷口からの出血は見られませんが、ウジ虫の脱出と同時に寄主の前蛹も徘徊を始め画面から消えました。
体内を食い荒らして育ったウジ虫が表皮を食い破って脱出する際には痛みが伴うのでしょうか(生まれいづる痛み?)。

今回野外で採集したマイマイガ終齢幼虫3匹の中で、無事に蛹化したのは2匹でした。
サンプル数が少な過ぎますけど、寄生率は1/3になります。

ヤドリバエによる行動操作?
このマイマイガ前蛹は寄生されていたということで、一連の異常行動の謎がようやく解けました。
寄主から脱出したウジ虫は地中に潜って蛹化します。
ヤドリバエが寄主の行動を操作して繭から外に移動させたとしたら、面白いですね。
ただしマイマイガの紡ぐ繭は粗末で非常に目が粗いので、脱出したウジ虫が繭に閉じ込められる心配は無さそうです。
単に体内を食い荒らされる痛みで暴れていた可能性も充分あります。
少なくとも寄主の内分泌系(脱皮変態ホルモン)は完全に撹乱されているようで、もはや脱皮・蛹化できません。(体力が残っていないだけ?)

つづく





↑【おまけの映像】

インターバル撮影を始める前に、微速度撮影で監視記録していた映像をブログ限定で公開します。
50倍速の早回し映像でご覧ください。
繭の外で静止している前蛹がときどき蠕動するのは断末魔の苦しみなのでしょうか。
初めのうちは営繭の名残のような行動も見られました。
脱出直前のヤドリバエ幼虫が寄主の皮下で蠢いている様子が見て取れます。


マイマイガの繭
マイマイガの繭がコレクションに加わりました♪

2014/09/12

タバコの花で盗蜜するクロマルハナバチ♀



2014年7月中旬

タバコを栽培している畑でクロマルハナバチBombus ignitus)のワーカー♀が訪花していました。
漏斗状の花筒の外に止まると、根元を食い破って穿孔盗蜜しています。
雄しべに全く触れず、花の受粉に寄与しないため、後脚の花粉籠は空荷です。

さてタバコは南米原産の栽培植物ですが、日本でタバコを正当訪花する送粉者は誰なのでしょうか?
舌の長いトラマルハナバチでも奥の蜜腺に届かないような気がします。
非常に長い口吻を持つスズメガ科が夜に訪花するのかな?と予想してみました。
現地ではハチドリや、タバコの害虫として悪名高いタバコスズメガが送粉者の役割を担っていそうです(害虫ではなく持ちつ持たれつの共進化なのかも?)が、日本には生息していません。



【追記】
タバコがニコチンという有毒物質(神経毒)を根で合成して葉や花、花蜜に貯めこむのは草食動物(昆虫)による食害を防いだり盗蜜者を排除するためと考えられているそうです。
だとすれば、今回クロマルハナバチ♀が平気で盗蜜していたのは定説に反するかもしれません。
クロマルハナバチは進化でニコチン耐性を獲得しつつあるのでしょうか?
それとも、このタバコは花弁のニコチン含有量が少ない品種なのかな?

【参考サイト】
「Unpredictability of nectar nicotine promotes outcrossing by hummingbirds in Nicotiana attenuata」というとても興味深い論文を日本語で解説してあるブログ花蜜に含まれる毒の効果を見つけました。


【追記2】
今村寿明『化学で勝負する生物たち―アレロパシーの世界〈1〉』によると、
ニコチン(葉の1〜9%)は(タバコスズメガの)他の昆虫にはたいてい、毒作用がある。0.001〜4g/kgで中毒、死。 (p33より引用)


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