2014/07/28

オドリコソウを訪花するトラマルハナバチ?♀の羽ばたき【ハイスピード動画】



2014年6月中旬

里山の草地に咲いたオドリコソウの群落でトラマルハナバチBombus diversus diversus)のワーカー♀が採餌していました。
(トラマルハナバチにしては毛の茶色が薄いですけど、別種ですかね?)

花から花へ忙しなく飛び回る様子を240-fpsのハイスピード動画で撮影してみました。
後脚の花粉籠は空荷ですが、頭を花の奥に突っ込んで(正当訪花)花蜜を吸っています。
同一個体を追いかけて撮影。

▼前回の記事(同じ群落で2週間前に撮ったHD動画)
オドリコソウの花蜜を吸うトラマルハナバチ♀


2014/07/27

イエユウレイグモ(蜘蛛)の交接から卵嚢ガードの再開まで【10倍速映像】



2014年6月上旬・室温23℃
▼前回の記事
卵嚢ガードを中断して♂と交接するイエユウレイグモ♀(蜘蛛)
室内の天井隅に張られた不規則網で交接を始めたイエユウレイグモPholcus phalangioides)の♀♂ペアが別れるまで確実に見届けたいと思いました。
♀が交接中に♂を捕食してしまう性的共食いの有無にも興味があります。
交接がどれぐらい長く続くのか予想できなかったので、長期戦に備えて10倍速の微速度撮影(ジオラマモード)で監視記録しました。
早回し映像にすると♂が外雌器に挿入した触肢を動かしている様子がよく分かります。

長い交接中に突然、♀が激しく暴れ出しました。(@5:26〜5:41)
それでも♂触肢の連結は外れず、♂には特に動きがありません。
再び♀が暴れ、♂を蹴飛ばして交接が終わりました。(@7:34)
性的共食いは行わず、♂は無事に逃げ延びました。
♂は網に居座って交接後ガード(♀が浮気しないように見張る)をすることもなく、天井の縁を右手の角(南東角)まで移動し、壁を下りて埃だらけの棚の裏へ隠れました。
(♂を一時捕獲して個体識別のマーキングを施したかったのに、残念ながら行方不明になりました。)

交接後に卵嚢を回収する♀
一方、交接後の♀は卵嚢の保管場所にすぐ戻りました。
卵嚢は全く動きませんから、網にかかった獲物のように振動で位置を知るのではなくて、どこに置いたかしっかり記憶していたのでしょう。
あるいは自分が移動中に残した「しおり糸」を辿って卵嚢まで戻るのかもしれません。
もし交接中に卵嚢をこっそり網から外して隠したり移動したりすれば、♀はどうするでしょう?
ダミー(偽物)の卵嚢を幾つも網に置いてやると、自分の卵嚢を正しく選んで回収できるでしょうか?
異変にすぐ気づいて卵嚢を守るために交接を中断しますかね?

▼関連記事
イオウイロハシリグモ♀による卵嚢選択実験

歩脚で抱えた卵嚢に口づけしたのは、不規則網に固定していた糸を噛み切ったのでしょう。
次に♀は身繕いを始めました。
歩脚を一本ずつ舐めて掃除しています。
その間、卵嚢を手の届く位置に(体の下面)に置いています。
歩脚の先で常に卵嚢に触れている…という訳ではないようです。
化粧が済むと卵嚢に何度もキスしてからようやく口に咥えました。(卵嚢ガードの再開)
向きを変えて不規則網を少し移動し、静止したところで撮影終了。

卵嚢をくわえてガード再開

♀の外雌器に交接プラグが残されているかどうか確認したかったのですが、腹面をじっくり接写するには♀を捕獲して麻酔する必要があります。
しかしこれをやるとストレス(身の危険)を感じた♀が卵嚢を捨てたり不規則網から逃去したりする可能性を恐れ、結局やりませんでした。

捕獲したついでに飼育してみる、という発想はこのとき無かったです。

この卵嚢から幼体が孵化するまで定点観察することにしました。

さて、今回の交接が長引いたのは、♂が触肢から移精する前に、♀が前回交接したライバル♂の精子を外雌器から掻き出していた(あるいは押し込んでいた)からのようです(精子間競争)。

そんな面白い話を予め知っていれば、交接中に♂の触肢の動きにもっと注目して接写したのにー。
一方イエユウレイグモ♀も完全に受動的ではなく、♂が気に入らなければ交接を早々に打ち切ることが多いそうです。(♀による密かな配偶者選択)
特に2回目の交接では選り好みが激しくなるのだとか。
実際に今回も交接中に♀が暴れました。
ドイツの研究グループが発表した実験結果によると、欧州産イエユウレイグモ(日本産と同種のPholcus phalangioides)♀が2匹目の♂と交接した持続時間は1.3〜221.7分間(平均30.7分間、中央値5.25分間、標準偏差51.48、サンプル数73)。
今回私が観察したペアは交接の持続時間が約90分間と比較的長い部類に入るようです。

▼参考文献
Schäfer, Martin A., and Gabriele Uhl. "Determinants of paternity success in the spider Pholcus phalangioides (Pholcidae: Araneae): the role of male and female mating behaviour." Behavioral Ecology and Sociobiology 51.4 (2002): 368-377.
検索すれば無料PDFファイルがダウンロードできます。

この文献を読んでみると、イエユウレイグモの配偶行動について以下のことを知りました。

  • 自然環境でイエユウレイグモは一妻多夫の乱婚。
  • 交接中にイエユウレイグモ♂は外雌器に挿入した触肢を捻るようにリズミカルに動かす。このとき前回の交接で蓄えられたライバル♂の精子を掻き出している。
  • 父子関係を調べると、♀と最後に交接した♂の精子が受精・産卵で優先的に使われている。
  • イエユウレイグモ♀の意志で交接の持続時間をコントロールできる。
  • 2回目の交接は初回よりも求愛から交接開始まで時間がかかり、持続時間がずっと短い。
  • 飼育下でイエユウレイグモは2年以上も生存し、室温を20℃に保てば季節を問わず繁殖活動を行う。♀は生涯に2〜6個の卵嚢を産む。(したがって、精子競争や性的対立を研究する実験動物としてなかなか優れている。)

この論文では飼育下でイエユウレイグモ♀一匹に対して2〜6時間という短い間隔で二匹の♂と連続して交接させています。
私が今回観察したような、卵嚢を一時的に手放して交接する事例は書かれていませんでした。


『クモの生物学』第10章「配偶戦略」も改めて読み返してみると非常に勉強になりました。

つづく


【追記】
「クモ蟲画像掲示板」にて、くも子さんより貴重な情報提供を頂きました。(吉倉眞1987『クモの生物学』より)
【卵のうの構造】イエユウレイグモの卵数は少なく20~30ほど。母グモはそれを鋏角でくわえ、蝕肢で支持している。捕虫の時は、卵塊を一時網に吊り下げておき、食事が終わるとまたそれをとり上げる。※

【姿勢の変化】イエユウレイグモの姿勢は温度変化によって変わる。温暖なときは、細長い脚で網糸にぶら下がっている(夏型)。ところが寒くなってくると一種の硬直姿勢をとるようになる(冬型)。広げていた脚を集束し、第一脚、第二脚を揃えて前方へ伸ばす。(この姿勢はクモが網を激しくゆすぶるときの姿勢である。)刺激に対する感受性は低下し、ほとんど体を動かすことがない。実験的に温度を下げて10℃にしたところ、メスの約50%、オスの約30%が冬型の姿勢をとった。これを温室に移してみると、一週間後には夏型に回復した。
※ てっきり卵嚢ガード中の♀は絶食してるのかと思い込んでいたので吃驚。
卵嚢を一時的に手放す行為に♀はさほど抵抗ないのだとすると、私のイメージも大分変わってきます。

ウツギの花で採餌するニホンミツバチ♀



2014年6月中旬

ニホンミツバチApis cerana japonica)のワーカー♀がウツギの花で採餌していました。
後脚の花粉籠はほぼ空荷の個体でした。



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