2015/10/26

営巣地候補の穴を掃除するも迷子になるオオフタオビドロバチ♀



2015年8月中旬

神社本殿(南面)の軒下や板壁の辺りをオオフタオビドロバチ♀(Anterhynchium flavomarginatum)が1匹飛び回っています。
様子を見ていると、いかにも借坑性の蜂らしく、とにかく「穴があったら入りたい」ようです。
どうやら母蜂が営巣地を物色していると分かりました。

やがて板壁の隅に隙間を見つけて潜り込むと、中を掃除しています。
白い綿のような塊を外に捨てました。
おそらくクモの住居網または卵嚢のように見えましたが、定かではありません。

この穴の周囲の板壁が白い泥で汚れているのは、昔ドロバチが営巣した痕跡かもしれません。
例えば巣材の泥玉を搬入する際に板壁を汚してしまった可能性があります。

営巣するには奥行きが足りないようで、掃除中の蜂の腹端が穴の入り口から見えています。(頭隠して尻隠さず)
掃除を済ませた蜂は外に出てきて身繕いすると、穴を中心にして扇状に飛んで位置を記憶するために定位飛行した…ように見えました。
ところが蜂は二度とこの穴に戻って来ませんでした。
結局この穴が気に入らなかっただけかもしれませんが、もしかすると軒下で迷子になり、戻りたくても戻れなかったのかもしれません。

真相は不明ですけど、この蜂は次に軒下(屋根裏)に隙間を見つけると中に潜り込んで調べています。
奥から白っぽい綿埃のようなゴミ(クモの住居網?)を引っ張り出すと、飛びながら捨てました。
脚に絡み付いた綿くずを振りほどくのに苦労しています。

せっかく営巣候補地の穴を掃除しても、一旦飛んで穴から少し離れると、途端に迷子になり、どの穴だったのか分からなくなってしまうようです。
見ての通り、この伝統的な木造建築はきわめて規則的(幾何学的)な繰り返し構造のため、蜂が位置を記憶しようとしても混乱してしまうでしょう。
ヒトならば全体を見通した上で「板壁の左端から数えて何番目の区画の右隅の節穴」のように座標の概念を用いて記憶するでしょう。
昆虫の複眼で世界がどのように見えているのか想像するのは難しいですが、蜂の視覚系および記憶の仕組みでは人工物の繰り返し構造になかなか対応できないのでしょう。
この現象は様々な種類の蜂で幾度も観察しており、キアシナガバチでは営巣初期に二巣並行営巣を始める創設女王もいました。
営巣を始め何度も通っているうちに巣の周囲の微細な目印を記憶して迷わなくなるようです。

実際にこのオオフタオビドロバチ♀が穴に巣材を搬入し始めるまで見届けるべきでしたね。



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