2015/07/07

マイマイガ幼虫(蛾)に寄生したサムライコマユバチの繭塊



2015年6月上旬

平地の雑木林でクヌギの幹にマイマイガLymantria dispar japonica)の幼虫が大量に止まっていました。
今年もやはり大発生したようです。
昼間はこのように樹皮に隠れて休み、夜になったら枝に移動して葉を食害するのかもしれません。(実際に夜に観察しに行ったら分かるはずです。)
それとも樹皮に静止している幼虫は、脱皮や営繭する前の眠のステージなのでしょうか?



▼関連記事(前年に同じ場所で撮影)
クヌギの木に群がるマイマイガ(蛾)老熟幼虫

害虫扱いされているマイマイガの強力な天敵として期待されるのが寄生蜂です。
クヌギ樹皮の裂け目の奥に潜む一頭のマイマイガ幼虫の体内からサムライコマユバチの一種(例えばブランコサムライコマユバチ[Protapanteles liparidis])と思われる寄生蜂の幼虫が一斉に脱出して近くに繭塊を紡いだようです。
小さな白い繭が10個集まっていました。
寄主の毛虫は体内を食い荒らされても未だ生きていて、虫の息ながら自発的に少し動きました。
頭部を繭塊に向けていて静止しています。
自由に徘徊したり摂食したりする運動能力は奪われているようです(単に弱っているだけ?)。
捕食寄生されたマイマイガ幼虫がこのまま死ぬまで寄生蜂の繭塊を守るように行動操作されているかどうか、昔から非常に興味があります。
寄生蜂の繭に更に寄生する二次寄生蜂がいるので、もし無防備な繭を守るボディガードとして寄主(マイマイガ幼虫)をマインドコントロールで雇うことができれば有利になります。

▼関連記事(6年前に調べた映像)
マイマイガ幼虫から脱出した寄生蜂の繭
6年ぶりにチャンスが巡ってきたので、調べてみることにしました。
草の茎の先で毛虫をつついてみました。
体に触れると威嚇する(嫌がる)ぐらいの元気は残っていました。
元気な個体なら触られると這って逃げ出すはずですが、そのような運動能力はないようです。
(おそらく体内の筋肉や運動神経が食い荒らされているのでしょう。)
幹を上下するアリが毛虫や繭塊を攻撃してくれないかと期待したのですけど、横を素通りするだけでした。
アリは力関係でマイマイガ幼虫よりも弱く、近寄りたがらないことを示す映像が後日撮れました。(映像はこちら
寄生蜂による行動操作の可能性については、残念ながら今回もはっきりした結論は得られませんでした。

実験のアイデアとして、確かめるべきことは明快です。
  • マイマイガ幼虫を寄生蜂の繭塊から少し離した時に自力で繭塊の傍に戻ってくるかどうか?
  • 寄生蜂の幼虫が脱出した後の寄主を解剖して筋肉や内臓器官の状態を調べる。
  • 寄生蜂の繭塊から寄主のマイマイガ幼虫を除去した場合と残した場合とで、二次寄生を受ける割合がどう変化するか?(素人が想像するに、二次寄生蜂の分布が一様とは限らないので、フィールドではかなり多数のデータを取って統計処理しないといけない気がします。)
  • それならむしろ飼育下で直接的に実験した方が楽かもしれません。(二次寄生蜂♀をどうやって手に入れるか?)



実はこのクヌギの木の下草で、同じく寄生蜂の繭塊に随伴するマイマイガ幼虫を3頭見つけました。
羽化してくる寄生蜂を調べるために、採集して飼育することにしました。
クヌギの樹皮からは採集しにくかったので、映像の個体は見送りました。

つづく→寄生蜂の羽化(微速度撮影)


【追記】
動物行動の映像データベースに「サムライコマユバチに操作されボディーガードとして振る舞うマイマイガ幼虫」と題した動画が公開されています。その説明文を読んでもタイトルのように寄主操作を言い切ってしまって良いのか、個人的には疑問です。私と似たような簡単な実験をしてるのですが、繭塊に覆い被さっている毛虫に直接触れたら嫌がるのは当然です。近くにある寄生蜂の繭塊だけに触れた時にも毛虫が威嚇・防御するかが問題です。

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