2015/01/09

駆除により再度引っ越したキイロスズメバチ移動巣(第三次巣)

2014年9月中旬
▼前回の記事
巣口周りの外被を増築するキイロスズメバチ♀

キイロスズメバチ移動巣の定点観察#13

定点観察の間隔がかなり開いてしまいました。
ようやく3週間(23日)ぶりに様子を見に行くと、東屋の天井裏にあったキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)の巣は綺麗さっぱり駆除されていました。(嘆息)
せっかく移動巣(第二次巣)を見つけたのに営巣活動を最後まで見届けられず、無念でなりません。
場所が場所だけに、巣が誰かに見つかって駆除されるのは時間の問題でした。
だから、このチャンスを少しでも活かそうと集中的に頑張って観察してきました。
スズメバチにとって最凶の天敵はヒトに他なりません。
言いたいことは山ほどあるのですけど、現代日本でスズメバチの肩をもつのはごく少数派で危険思想になるのでしょうね…。
人通りが少ない山道とは言え公共の施設ですし自分の所有する山ではないので、舌打ちして泣き寝入りするしかありません。



巣盤の欠片が落ちていました。
一段しか巣盤が作られていなかったのか、残りは駆除の業者が持ち帰ったのか不明です。
育房内に蜂の子が見当たらなかったのも謎です。



余談ですが、オオハキリバチの死骸が床に転がっていました。
(キイロスズメバチの死骸は見当たらず。)
実は同じ東屋で建材の節穴に借坑性のオオハキリバチが例年営巣していたのです。
ヒトを刺したりしない穏やかで無害な蜂なのに、キイロスズメバチ駆除のとばっちりを受けたようです。
地面を徘徊するクロオオアリにとって虫の死骸はご馳走のはずなのに、死んだオオハキリバチには全く見向きもせず放置していました。
駆除に使われた殺虫剤が残留しているのかと思うと、暗澹たる気分になります。
※ オオハキリバチは樹脂を巣材に使いますから、死骸の表面に残った樹脂がアリ避け(忌避剤)になっている可能性もアリますね。



閑話休題。
興味深いのはここからです。
呆然と私が立ち尽くしていると、殺戮を免れたキイロスズメバチの残党が同じ東屋内で元の巣から数m離れた天井裏に再営巣していることに気づきました。
天井板(幅14.5cm)に開いた穴の奥にワーカー♀が出入りしています。
元々はクマバチやオオハキリバチが穿坑した穴だと思われます。
穴の縁がギザギザなのは、キイロスズメバチが通れるように板を噛んで拡張したのかもしれません。
(後日、巣口の直径を採寸するとXcm。)
今度は開放空間に巣を吊り下げるのではなく、危険を学習して安全な閉鎖空間に移動巣(第三次巣)を作り始めたのであれば、スズメバチも健気というか逞しいですね。
巣を完全に破壊されたのに、ヒト全般に対して復讐心を抱いて私を刺しに攻撃してくることもありませんでした。
駆除から日数が経てば忘れてしまうのでしょう。
全く別のコロニーが新たに引っ越してきた可能性もありますけど、だとすれば開放空間に営巣するはずです。
(梁に残留する殺虫剤を嫌ったのでは?と再反論されそうですが、第三次巣という解釈が最も自然でしょう。)
それにしても、観察間隔が開いてしまったことが悔やまれます。
駆除された時期はいつなのだろう?

カメラのレンズをズームしても穴の奥は暗くて見えません。
コロニーの規模(蜂の数)が激減しているようで、板の裏で活動している気配を感じられませんでした。
ファイバースコープが欲しいところです。
軒下を飛び回るだけでなかなか帰巣しない個体も結構いました。

もし女王蜂が殺されていたとしても、残ったワーカー♀だけで営巣を続け産卵することが可能です(働蜂産卵)。
ただしワーカーは交尾していないため、雄蜂(♂)しか生まれてきません。
それでも次世代に遺伝子を残す道が残されています。
(参考:『スズメバチの科学』p28)

板の裏に隠れ巣の発展が見えなくなったのでは観察に通っても面白くありません。
その後は第三次巣に面白い展開は特に見られず、雄蜂が羽化する前にコロニーは尻すぼみに衰退してしまいました。
(穴に出入りする蜂が次第に居なくなった。)
スズメバチの習性を熟知した優秀な駆除業者の手で、残党も殺虫剤処理でとどめを刺されたのかもしれません。

アフターケアも万全!(皮肉)

シリーズ完。



※【追記】
『都市のスズメバチ』p23によると、キイロスズメバチは
 働きバチの羽化後営巣空間が狭くなると、7月〜8月により広い場所を求めて引っ越しをする習性がある。 働きバチは全ての幼虫が羽化するまで(引越し後1ヶ月ほど)は新巣と旧巣の間を行き来して子育てを行う。
 そのため、この時期に引越し先の巣を駆除すると、元の巣から飛来した働きバチによって、何度も巣が再建されることがあるので注意が必要である。


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