2014/05/26

脱皮に備えて蠕動するスズバチ前蛹【微速度撮影】#1

2013年10月上旬

山裾に設置された境界標の側面にスズバチOreumenes decoratus)の泥巣を発見。
泥巣のサイズは縦60mm、横35mm。
西南西に向いたコンクリート側面に地上から約10cmの高さに作られていました。
周囲の環境は水路沿いのアカマツ並木。



余談ですがスズバチの泥巣と言えば、このような人工物(石灯籠石碑コンクリート縁石三角点角材など)の平面を営巣基とした泥巣しか私は見つけたことがありません。
木の枝に作られる例もあるらしいのですけど、なぜか未見です。

スズバチになると体が大きいために壺も大きく、もはや細い草茎にとりつけることはできないが、かなり細い樹の枝などにもとりつける。(『日本蜂類生態図鑑』p36より)


フィールドで見つける目が培われていないだけなのかもしれませんが、密かに別の仮説を考えています。
雪国のスズバチは木の枝に泥巣を作らないのではないでしょうか?
豪雪地帯のスズバチ♀が夏はともかく秋に越冬用の泥巣を作る際は、雪に埋もれても大丈夫なしっかりした土台(営巣基)を母蜂が選定していても不思議ではありません。
スズバチの泥巣はただでさえ大きくて重いので、もし木の枝に作られた場合は大雪が降れば雪の重みで潰れたり枝が折れて落ちたりしやすいでしょう。
したがって、そのような造巣習性をもつ母蜂は雪国で子孫を残し難いはずです。
南北に長い日本列島で南の地方と北の雪国でスズバチ♀を生け捕りにして移送し、互いに入れ替えた地方で泥巣を作らせれば、どうなるでしょう?
営巣基の選択行動が遺伝的なプログラムによるもので生息地域によって異なるかどうか、解明できるかもしれません。
そのような研究は既に行われていますかね?

スズバチ泥巣の発掘作業は何度もやっているので手慣れたものです。
マイナスドライバーで泥巣の縁を少しずつ削っていきます。
想定外だったのは古い境界標
の側面には「農」という文字が刻んであり、平面ではありませんでした。
そのため泥巣をきれいに剥がす事ができませんでした
どうやら母蜂は表面の窪みを気に入って利用したようです。
中の育房は3室しかなくて、縦に並んでいます。
下にある2室の繭が破れてしまいました。
繭から露出した前蛹が驚いて動いています。
特筆すべきは、前蛹の頭の向きが揃っていたことです。
寄生ハエの囲蛹は見当たりません。
貯食された芋虫の食べ残しも無く。黒い糞の粒だけが育房に残されていました。
一番上の育房からは繭のまま採集しました。



羽化したスズバチ成虫が泥巣から脱出する様子を撮影しようとここ数年、試行錯誤しつつ取り組んできました。
残念ながら今回の泥巣は大きく壊れてしまったため、その目的には使えません。
それでも別のテーマのために蜂の子を清潔なプラスチック小容器に移し、室内で越冬させました。



2014年5月上旬

室温で休眠越冬した前蛹が2匹、いつの間にか蛹化していることに気づきました。

野外より暖かい室内で前蛹を冬越しさせても蛹化のタイミングが狂わない(季節外れに早く蛹化したりしない)ことにいつも感心します。
残る1匹の前蛹が蛹に脱皮する過程を観察するために、10秒間隔のインターバル撮影で監視することにしました。
脱皮の前兆や時間帯が分からない以上、愚直に長期戦で粘るしかありません。
ドロバチは一般に雄性先熟なので、最後の1匹が♀だとすると♂に比べて発育が遅れる可能性があります。

ひたすら眠っているように見える前蛹も、早回し映像で見ると時おり身震いするように自発的な蠕動を繰り返していることが分かります。
映像では左が前蛹の頭部になります。
黄色かった前蛹の表皮が次第に白っぽく皺々に変化しました。
当時はこれが脱皮の兆候だとは気づきませんでした。
容器の蓋を開けたまましかもLEDの照明を当て続けて撮影していたせいで前蛹が乾燥してしまった(干からびた?)のかと心配しました。

実は私の不注意で容器を一度落としてしまい、先に蛹化したばかりの個体は強い衝撃に耐えられず血(体液?)を吐いて死んでしまいました。(未だ生きてる?)
一緒に落とした前蛹の方も悪い影響が出ないか心配でした。(結果的に前蛹は衝撃に対して強かったみたいです。)

つづく


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