2012/08/23

耳欠けニホンカモシカと遭遇




2012年6月下旬

送電線の電柱が並ぶ急斜面に焦げ茶色の大型獣を発見。
テレコンで覗くと電柱の横に夏毛のニホンカモシカが立っていました。

カモシカは後ろ向きの姿勢から上半身を捻り、振り返ってこちらを見下ろしています。
送電線を通すために切り開いた斜面は通常、電力会社の保守作業員によって頻繁に下草が刈られているのですが、たまたまこの時期は大きなシダの葉などが生い茂っていました。
ここでカモシカはおそらく何か採食していたと思われます。

【追記1】
高槻成紀『北に生きるシカたち シカ、ササそして雪をめぐる生態学(復刻版)』という本を読んでいたら、上記下線部のような送電線沿いに作られている帯状の伐採地を「伐採帯」と呼ぶことを知りました。
・(伐採帯には)植生遷移の初期に出現する、いわゆるパイオニア植物や林縁に出現する植物が多かった。(p183より引用)
・伐採帯沿いでは伐採帯がシカの食糧となる植物を増加させ、同時に、すぐ近くにシカが逃げ込んだり、休息、睡眠をとるための林があるため、全体として好都合な条件を提供する。
・伐採帯は長く続く林縁とみなすことができる。(p186より)
これまで私は里山で傷跡のように見える伐採帯を醜悪な必要悪とみなしていたのですが、認識を改めさせられました。
野生草食動物にとって伐採帯は極相林(原生林)よりも暮らしやすいことになり、目撃例が多いのも納得しました。
伐採帯の存在が里山の生物多様性を増しているというデータを見せつけられると、癪ですけど電力会社のプロパガンダではなく、科学的事実として認めざるを得ません。

かなり黒っぽい毛並みのカモシカで、それまで見たことのない顔つきの個体です。
右耳に切れ目があるのが特徴的で、もし再会すれば個体識別が出来そうです。(※)
顔を正面から見ると垂れ目に見えます。
左右の眼下腺がコブのように膨らんでいます。


斜面の下にいるこちらが風上でした。
カモシカは鼻腔を広げ頻りに風の匂いを嗅いでいます。
犬と同様に鼻面が濡れています。
やがて完全にこちらへ向き直り、斜面を左にトラバース移動しスギ林の中に姿を消しました。

里山の林道を登り始めてすぐの標高~350m地点。



【追記2】
※ 実は3年前にも林道で遭遇していました。→「野生ニホンカモシカとの最接近遭遇
目撃地点を思い出しても、「あの辺一帯を縄張りとしてるのねー」と辻­褄が合います。


『森の賢者カモシカ:鈴鹿山地の定点観察記』p56によると、
識別のポイントは、角の形状、顔面の色や紋様などである。これらの特徴は、年齢を経るごとに少しずつ変化していった。たとえば、顔面の色が少しずつ濃くなったり、突然、角の先端が一部欠けたりすることもあった。冬毛と夏毛の違いにも注意する必要があった。



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